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第十三話 作者からの警告

Autor: 天咲琴乃
last update Data de publicação: 2026-09-08 20:02:48

《イズミ》

《お願い》

《二つ目を開けないで》

《――天咲琴乃》

 イズミは、その文字を何度も読み返した。

「琴乃……」

 返事を書くため、黒い本へ手を伸ばす。

 だが。

《通信終了》

 文字が消えた。

「待って!」

 白紙になったページをめくる。

「琴乃! まだ聞きたいことがある!」

 返事はない。

 代わりに、第一神域そのものが崩れ始めた。

 空に浮かんでいた逆さまの海が割れ、街並みが黒い粒子になって消えていく。

「ここを出るぞ!」

 マキヒトが叫んだ。

 遠くに石の鳥居が現れる。

 チョコが走り出した。

「チョコ!」

 イズミたちは後を追う。

 地面が消える。

 建物が消える。

 背後から、無数の声が聞こえた。

『忘れないで』

『私を忘れないで』

『ここにいた』

『私は確かに――』

 イズミは振り返りそうになる。

「見るな!」

 マキヒトが手を掴んだ。

「走れ!」

 四人と一匹が鳥居をくぐる。

 次の瞬間。

 イズミは古書店の床へ倒れ込んだ。

「……戻った?」

 タカオミが息を切らしている。

 くるみも座り込み、胸を押さえた。

 マキヒトだけが立ったまま、鳥居があった場所を見つ
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  • FICTIONー石の鳥居と白狐ーそれは創作かそれとも嘘かー   第二十三話 創造主

    《照会先》《創造主》 その二文字を見た瞬間。 イズミは、なぜか笑いそうになった。「……何よ、それ」 笑えるはずがない。 原作者ですら十分おかしい。 自分たちの人生を書いた存在がいる。 それだけでも、今まで信じていた世界は根底から崩れている。 なのに。「原作者より上に、まだ誰かいるの?」 誰も答えない。 黒い本。 タカオミの手帳。 琴乃のパソコン。 三つの媒体に、同じ文字が表示されている。《創造主》 チョコだけが震えていた。「チョコ」 イズミがしゃがむ。「知ってるの?」 白狐は答えない。 藤紫の紐についた鈴も鳴らない。 くるみが突然、両耳を押さえた。「……っ」「くるみ?」「静かに」 全員が黙る。 巨大時計の音。 風。 紙が擦れる音。 それ以外、何も聞こえない。「何が聞こえる?」 くるみは目を閉じた。「声じゃない」「じゃあ?」「……音」 眉間に皺が寄る。「何かを叩いてる」 カタ。 カタカタ。 カタ。 カタカタカタ。 イズミにも聞こえた。「何、この音」 タカオミが顔を上げる。「キーボード?」 琴乃が息を呑んだ。『……違う』「え?」『私じゃない』 裂け目の向こうで、琴乃は両手をキーボードから離している。 それでも。 カタ。 カタカタ。 音は止まらない。 そして。 琴乃のパソコンに文字が現れた。《第二十三話》 イズミの背筋が冷える。「……また」『私、書いてない』《創造主》 琴乃が椅子から立ち上がる。『タイトルまで……』 イズミは黒い本を見る。 同じだ。《第二十三話 創造主》「誰が話数を決めてるの?」 第十九話から残っていた疑問。 琴乃ではない。 イズミでもない。 原作者ですらないのなら。「創造主?」 黒い本に文字が現れる。《照会中》《応答なし》「……いない?」「そうとは限りません」 タカオミが言う。「応答しないだけかもしれない」「神様みたいね」 イズミが何気なく言った。 その瞬間。 チリン。 チョコの鈴が鳴った。 全員が白狐を見る。「……何?」 チョコはイズミを見つめている。「今の言葉?」 チリン。「神様?」 チリン。 くるみの顔色が変わった。「待ってください」「どうしたの?」「昔から

  • FICTIONー石の鳥居と白狐ーそれは創作かそれとも嘘かー   第二十二話 私は人形じゃない

    『あとは、私が書き直すから』 優しい声だった。 怒鳴りもしない。 脅しもしない。 むしろ、幼い子どもを安心させるような声。 だからこそ。 イズミは、その声が嫌いだと思った。「……嫌」 石の鳥居の向こう。 真っ白な光が揺れる。『怖がらなくていい』「怖がってない」『大丈夫』「大丈夫じゃない」 イズミはチョコを抱いたまま立ち上がった。 腕の中で白狐が震えている。 こんなチョコを、イズミは知らない。 どんな怪異を前にしても。 記憶を消されても。 世界が崩れても。 チョコはいつも自分たちを導いた。 そのチョコが。 今は、あの声を恐れている。『イズミ』 声が名前を呼んだ。『君は少し、予定から外れすぎた』「予定?」『そう』 ホームに白い文字が降り始める。《天野イズミ》《二十三歳》《探偵》《主人公》《性格――》 イズミは文字を見上げた。《正義感が強い》《好奇心旺盛》《危険を顧みず真相を追う》《青野マキヒトに守られる》 マキヒトの眉が動いた。《白野タカオミに記録される》 タカオミが手帳を閉じる。《紫乃くるみに導かれる》 くるみは静かに文字を見つめた。《白狐チョコを従える》「……従える?」 イズミの声が低くなる。 チョコが顔を上げた。「違う」『何が?』「チョコは私のものじゃない」 イズミは白狐を抱く腕を緩めた。 逃げようと思えば逃げられるように。「そばにいてくれてるだけ」『同じことだよ』「同じじゃない」『君のために配置した』「だから?」 白い文字が止まった。「あなたが作ったから、あなたのもの?」『……』「役割を与えたから、その通りに生きろって?」『それが物語だ』「ふざけないで」 マキヒトが横目でイズミを見る。 タカオミの手が、再びペンへ伸びた。「書くの?」 イズミが聞く。「記録します」「何を?」「あなたが今から言うことを」 イズミは少し笑った。「じゃあ、ちゃんと書いて」「はい」 タカオミがページを開く。 イズミは鳥居へ向き直った。「私は、天野イズミ」 ペンが走る。「二十三歳。探偵」『それは私が決めた』「そうかもね」 イズミは認めた。「名前も」 一歩。「年齢も」 もう一歩。「探偵になったことさえ、あなたが書いたのかも

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